苺畑でつかまえて

カツ&サリー、闘いの記録

潜水服は蝶の夢を見る、って話

今、カツがお世話になっているリハビリ病院の看護士さんに、興味深い本を紹介してもらった。

主人公は、パリのファッション誌「ELLE」の編集長だったジャン=ドー、42歳。彼は、超一流の服を着て、超一流の食事と酒を楽しみ、超一流の旅を満喫して、超一流の女と戯れている、そんなちょいワルオヤジだ。だが、ある日、愛車のジャガーを転がして、パリ郊外の妻と暮らす子供たちの元へ遊びに行った帰り、彼の人生は急転直下する。脳梗塞を起こした彼は、左目の瞳と瞼の筋肉としか動かなくなり、左目の視覚と聴覚以外のすべての感覚がマヒしてしまう。

「ぼくは生きている。話せず、身体も動かないが、確実に生きている。

目の前に広がる暗闇…
視界が徐々に開けてくると、そこは病室らしい…
。」意識を取り戻した主人公は状況を把握出来ないが、やがて、自分が倒れ、昏睡から目が覚めたのだと理解する。
医者や看護婦がやってくる。だが、おかしい。「意識ははっきりしているのに、自分の言葉が通じない。しかも、身体全体が動かない。唯一、動くのは左眼だけ。つい先日までは、ELLE誌編集長として活躍し、人生を謳歌していたのに…。これなら死んでしまった方がましだ。」

そんな主人公に、言語療法士が、瞬きでコミュニケーションをとる方法を教えてくれる。言語療法士が苦心の末編みだしたコミュニケーションの手段だ。彼女が「E、S、A、R、I、N……」とフランス語単語の使用頻度順に並べたボードのアルファベットを読み上げる。彼は(聴覚はあるので)欲しい文字の時、2度ウィンクして1文字ずつ選んでいく。そうして20万回のまばたきの果てに完成するのが、ジャン=ドーによる自伝「潜水服は蝶の夢を見る」である。

たとえ身体は、肉体という檻に閉じこめられた“ロックト・イン・シンドローム”という症状に陥り、潜水服を着ているように動かなくても、蝶のように飛躍できるイマジネーションと記憶がある!そう確信して自伝を書き上げたのだ。

この作品は映画化され、2008年2月には公開もされているので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれないが、私にとっては、とても他人事とは思えない話だった。かつては私もカツに「ひらがな表」を見せながら、何とかコミュニケーションをとっていたのだから。

何時間もかけて、単語をひとつひとつ拾うのは、本当に根気のいる作業。しかも、ようやく出来上がった文章が、必ずしもこの本の話の様に「前向き」な言葉ばかりとは限らない。それでも、そうするしか他に本人の意思を確かめる方法がなかったりする。それはもちろん本人にとっても拷問に等しい苦しみかもしれないが、そこに立ち会う家族にとっても地獄の苦しみである事を、私は知っている。

今は「ちょっと静かにしててくれない?」と思うくらいオシャベリなカツにまで復活してくれたから良かったケド、もしも、あのままだったら・・・?と想像するとぞっとする。

そして、今なお、この本(映画)の主人公と同じ様な状況に立たされている多くの無名の戦士の方々に、心からのエールをお送りしたいと思う。

夢の暮らし

私は、カツが脳出血で倒れて以来この4年半程の日々を「身体の不自由な方々と、そのご家族」の、すぐ間近で過ごして来た。
そして、それがどんなに過酷な状況であるかという事を身をもって体験してきた。

そんな中で一番感じた事は「ああして欲しい、こうして欲しい。」という看者本人や家族の要望をじっくり聞いてくれる人が殆どいないという事。また、それらに対応できる様な法整備が殆どない、という現実。反対に自分達がこれから何をするべきなのか、何を要求して何を拒否するのが「自分達らしい」のかを、あまり深く考える余裕も無く、ただ単に病院からの「お達し」を待っているだけの人や、どう言ったって分かってもらえない、仕方が無いと諦めてしまっている人があまりにも多いという状況だった。障害者のいる家庭はいつもどこかに何かの不安を抱えている。もちろんそれは、人それぞれで、大きな悩みを抱えている人もいれば、些細な事に手間取ってしまっているだけの人もいる。でも、もし身近に「仲間」がいたら・・・?

そこで私は考えた。例えばネットの掲示板上で励まし合っている様な、そんな暮らし方は出来ないものだろうか、と。
例えば、病院の様な施設(?)に家族も一緒に住めて、そこからどこかに出勤する人もあり、またその施設に勤める人もありで、家族の暮らしもあるのだけれど、24時間、誰かがいつでも支えてくれる、助けてくれるという安心感があって、おまけに同じ様な苦労をしている方々との交流も頻繁に出来る様な、そんな生活。確かに夢の様な話かもしれない。でも「大きな施設」と考えると難しそうだけど、そういったコミュニティー、地域、と考えたら実現できそうな気もしてくる。

莫大な資金をかけてヘンな「箱モノ」を作ったり、リゾート開発なんかして無闇に自然を壊す時間と手間があるのなら、そんな「リハビリ特区」みたいな構想が出来る政治家さん、どこかにいませんかねえ。

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Author:katsutsun
若くして脳幹出血に倒れ、中途障害者となったカツの毒舌ブログ。

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